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徴用工問題の現金化!期限はいつか、対抗措置や報復内容まとめ

元徴用工訴訟問題(応募工問題)で、韓国内における日本企業の資産現金化が非常に現実味を帯びてきています。

実際に現金化されれば只でさえ戦後最悪とも言われる日韓関係に深刻過ぎるダメージを与えることにもなりますが、実際現金化が行われるのはいつか、期限はあるのか、これまでの経緯とともにまとめてみました。

また現実に現金化が行われたときの日本政府による対抗措置、報復措置はどのようになるのかも併せてまとめてます。

話の大元となる韓国の大法院による判決(2018年)やそれまでの経緯は以下でまとめてます。
徴用工問題を分かりやすく!日韓請求権協定の罰則や条約破棄するとどうなるか

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現金化の期限はいつか

まず韓国の大法院(最高裁判所)での賠償命令判決(2018年)から2022年の現金化にいたるまでの大まかな流れを見てみます。

  • 2018年10月30日(韓国)賠償命令の判決
    韓国の大法院で、徴用工問題に対して日本企業の賠償命令の判決が出る。
    (判決文の日本語翻訳:2018.10.30 新日鉄住金事件大法院判決(仮訳)
  • 2019年1月9日(韓国)日本企業の財産差し押さえ申請が認められる
    原告側(元徴用工側)による日本企業の財産差し押さえ申請が認められる。
    (株式や商標権などが押収され現金化に向けた手続きが進められる)
  • 2019年1月9日(日本)政府間協議の開催がスルーされる
    日韓請求権協定に基づき、日本政府は韓国側に政府間協議を要請するがスルーされる
  • 2019年5月1日(韓国)差し押さえ資産の売却命令を申請
    韓国国内の差し押さえた資産に対し、原告側(元徴用工側)は売却命令を裁判所に申請
  • 2019年5月20日(日本)仲裁委員会の開催がスルーされる
    日韓請求権協定に基づき、日本政府が仲裁委員会の開催を韓国側に要請するもスルーされる
  • 2022年4月19日:(日本)日本企業の再抗告(不服申し立て)
    韓国の大法院で、資産の売却命令を不服とする日本企業再抗告(不服申し立て)が受理される
  • 2022年7月26日:(韓国)大法院に意見書を提出
    韓国外務省が大法院に対し、問題解決に向け努力していると説明した意見書を提出
  • 2022年8月19日:(韓国)判断先送り
    日本企業の再抗告に対し、大法院で棄却が予想されていた判断の先送り
  • 2022年9月4日:(韓国)最高裁担当判事の退任に伴い9月4日以前に決定か
    徴用工訴訟担当の最高裁判事が9月4日に退任予定であり、このため8月中に再抗告に対する判断が出る見通しとの報道がされる

韓国、日本のメディアでは、実際に現金化されるとしたら再抗告から4か月後の8月19日が最終判断時期(韓国の最高裁は再抗告を受理してから4カ月以内に審理不続行と棄却することが可能)と報道されてましたが、この他にも9月から10月との報道もありました。

そうした中で、7月に提出された意見書の効果があったのか、最も早い期限の8月19日には再抗告についての決定が大法院でなされず一旦先送りとなってます。

大法院における担当判事の退任が9月4日に予定されていることから、8月中には決定が出る見通しとの報道もあり、いつ現金化されるかは早ければ9月4日以内、遅くとも10月ごろまでには、となりそうです。

ただ、棄却判断をすれば日韓関係に大きな影響があることは担当判事も勿論承知していることでしょうし、担当判事からしてみれば棄却するしないの判断を出せばいずれにしても非難を受けることにもつながり、このまま何も判断を出さずに退任することも考えられます。(後任に任せる、といった問題先送り)

いずれにしても現状非常に現実味を帯びている元徴用工訴訟における現金化問題。

本当に日本企業の資産の現金化が行われれば、ただでさえ戦後最悪と言われる日韓関係は修復しようのない破滅的な打撃になるかもしれません。

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賠償命令の判決後の動き

元々は2018年に韓国の大法院(最高裁判所)で日本企業に対して賠償命令の判決がされたことに始まりますが、その後現金化に至るまで、回避するタイミングが無かったのか。

日本側、韓国側の対応はどうなっていたかを見てみます。

まずは日本側の対応

2018年10月30日の韓国大法院の賠償命令判決に対し、当時から現在に至る日本の首相の発言をまず見てみると...

安倍首相(2018/10/30報道)
韓国の判決に対し「日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している。国際法に照らしてあり得ない判断。日本政府としては毅然と対応する」と激怒。

菅首相(2020/11/10報道)
国家情報院院長に対し「関係改善のきっかけを韓国側が作るべき」と韓国側に対応を求める

岸田首相(2022/7/19報道)
韓国外相に対し「解決に向けて、引き続き尽力していただきたい」と韓国側の対応を求める

日本政府の立場は過去から現在に至るまで一貫して、韓国大法院の徴用工問題の判決は「国際法違反」であり「韓国側が先に解法を提示すべき」となってます。

そうは言いつつも日本側も解決の姿勢をとったり解決に向けての提案は韓国に対して行っていて、それが日韓請求権協定に基づく政府間協議の開催(2019年1月)、仲裁委員会の開催(2019年5月)。
(どちらも韓国政府にスルーされましたが)

あくまで「日韓請求権協定に基づく中で解決をする」という立場が日本らしいと言えば日本らしく当たり前のことなんですが、でも韓国側からこの「日韓請求権協定に基づいて」という言葉が全く報道されてないように見えます。

そもそもの2018年韓国大法院(最高裁判所)の判決が、その判決文から趣旨を見ると戦前の日韓併合までさかのぼり、日韓併合は不当だった(不法占拠だった)、だから戦時における徴用工(応募工)も日韓請求権協定に適用されるものではなく不当であり反人道的不法行為、だから時効の消滅もないし賠償責任がある、というもの。(参照:三菱事件大法院第一部判決 仮訳

こうした判決が背景にある韓国の立場的には、日韓請求権協定はもうどこかに飛んで行ってしまっているようです。

そして2022年8月現在、日本側では現金化がなされた場合の対抗措置や報復措置が外務省が中心となり検討されてます。

つまり日本側では徴用工問題はすでに終わったことであり、現在問題となっている現金化問題は韓国国内で解決するべきものとの位置づけ。

日韓請求権協定に基づく提案にも乗ってこないし、韓国側で解決できずに現金化され現実の問題となれば、日本としては韓国に対して対抗措置、報復措置をとる、ということになりますね。

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韓国側の対応

対して、2018年韓国大法院の判決以降の韓国国内の動きを見てみると、まず当時の文在寅政権時代。

さすがにこのままでは大問題になると思ってか、2018年10月の判決直後に問題解決のための組織(民間専門家も含まれるタスクフォースと呼ばれる組織)が首相直下に設置されたようですが、結果として2022年5月の大統領退任までの3年と半年余り、これといった案も出なかったようですね。
(日本をうまく巻き込んで解決する案を考えていたとしたら、日本の立場が変わらない限り何の案も成立しないでしょう)

これとは別に2021年10月ごろに韓国与党「共に民主党」議員から提案されていたのが「代位弁済」方式。(日本政府に代わって韓国政府が賠償金を弁済しその後日本側に請求する方式)

そして2022年5月に大統領が変わり、2022年7月4日、「官民協議会」(民官協)と呼ばれる組織が発足し初協議が持たれてます。

この官民協議会の主宰は韓国外交部で、政府関係者、徴用工被害者団体、法曹界、経済界などから10数人が参加し、徴用工問題に対し「韓国国民に理解してもらえる解決方案を導き出す」というために作られたもの。

もうすぐ現金化、といった問題の実体化がすぐそこまで迫る土壇場の2022年7月に作られた組織ですが、7月4日、7月14日、8月9日の3回の協議を行ってます。

2回目までの協議では以下の項目が話し合われたようですね。

  • 1)被害者と被告企業間の直接交渉と外交的保護権
    元徴用工側は日本企業との直接交渉を要求しており、そのため海外(日本)で不当な待遇を受けた場合に相手国(日本)に対して保護・救済を要求できる外交的保護権を韓国政府に要求
    (でも企業との直接交渉は政府間協議ではないので外交的保護権の発動は難しい)
  • 2)代位弁済方式
    代位弁済方式をとる場合、韓国国内法によると被害者側の同意を得なければならないようで、被害者側では「そのための基金を作るのに被告企業の参加が不可欠」(つまり韓国政府が肩代わりするのはNG)の立場であって実現は難しい

参照:強制動員の代位弁済…被害者の同意なしには不可能 2022/7/18

こうした協議がもたれる中、2回目の会合の後、大法院に対して「徴用工問題解決に向けた外交的努力」を説明する意見書(国家間で解決に向けて努力しているから最終確定はちょっと待ってねという要請)を提出したのが問題になり、3回目の協議からは徴用工被害者団体が離脱する(不参加)、といった混乱状態。

意見書を何の相談もなく出したことで信頼が損なわれたというのが理由のようですが(なんで勝手に現金化を遅らせるようなことをするんだ、という感じでしょうか)、当事者団体の離脱(不参加宣言)は、国民感情を非常に優先しているように見える韓国社会から見てどう見えるのか。

(とてもその設立趣旨である「韓国国民に理解してもらえる解決方案を導き出す」の実現が出来てないように見えそうです)

2022年7月18日、8月4日と林芳正外相と韓国の朴振外相が徴用工問題含めて会談してますが、7月の来日では朴外相は日韓議連とも会談したようです。

日韓議連との会談では、朴外相より「日本側も誠意あるリアクションをいただければありがたい」といった趣旨の発言があったようで、これには「言語道断だ」といった声が日本側からあがってます。

韓国側が具体的な解決策を示さず日本にアクションしてほしいというは言語道断だ、ということですね。

自民党外交部会では「韓国側が対応するべきであり日本政府は安易に譲るべきではない」という発言や、政府からは「現金化された場合に備えて具体的な対抗措置を考えている」との説明も出ています。

韓国では、2022年8月17日、就任から100日を迎えた尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は会見で「日本との衝突なしに原告側が補償を受けられる方法を考えている」と述べているようですが、具体策までは言及されてない状況。

このまま行くと日本政府からの対抗措置、報復措置が採られてしまうといった危機感からのメッセージになると思いますが、具体的な策が語られてないところから、単なるパフォーマンスと見る方も多いかもしれません。

ただ再抗告に対する大法院の棄却がされると注目の集まる8月19日には、実際には何の動きもなかった(つまり判断が先送りされた)ことから、韓国内部ではいろいろな動きの中で1日でも後回しにする努力はされているのかもしれません。

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具体的な対抗措置や報復は?

では日本政府の考える韓国に対する対抗措置とはどういった内容のものなのか。

産経新聞7月21日の報道では「外務省は、抗議や遺憾というレベルではない。対抗措置をシミュレーションしている」と報じてますが、駐日韓国大使は8月11日、現金化された場合の影響は「日韓の企業間で数兆円から数十兆円のビジネスチャンスが吹き飛ぶ可能性がある」という趣旨の発言もされているようです。(JBPress 2022.8.11

これまでの報道からみると、対抗措置、報復措置としては以下のような内容が見られます。

  • ビザ(査証)の発給制限
  • 駐韓日本大使の召還
  • 報復関税(輸入関税の引き上げ)
  • 日本国内の韓国資産の差し押さえ

ここには4つしかありませんが、既に2020年時点で「二桁のオプション」と報道されていることから、実際には10以上の項目が検討されているようです。

ビザの発給制限は、コロナ禍でそもそも入国者がすくないことからそれほど効果もないと考えられているようですし、大使の召還も何か韓国に直接打撃があるかと言えばそうでもないでしょう。

ただ「大使の召還」は諸外国から見れば、日本が怒っているアピールぐらいにはなるのかも。

打撃があるとしたら経済的な視点で日本国内にある韓国資産の差し押さえや、過去のホワイト国問題では今だに韓国側から再びホワイト国に戻すよう要求がされていることからかなり影響があるようで、関税による対抗措置は韓国にとって一段と打撃になる可能性もありそうです。

今後の日韓関係と外交

韓国大法院の判決の根幹にあるのが、そもそも日韓併合は不当(不法占拠)であり、だから戦時徴用も不当で賠償責任がある、というもので、日本が主張する(日韓併合後の)日韓請求権協定で解決済みの立場とは全く異なるもの。

いくら話し合ったところで、この2つの主張の落としどころは見つからないのは当たり前と言えば当たり前のように見えますが、実際現金化され日本の対抗措置が発動した場合、韓国側も自らの主張を正当化するために日本の対抗措置に対して同等の報復措置を取ることも考えられます。

現金化に対する日本の対抗措置はそうした観点から危険性の少ないと思われるもの(ビザの発給制限や大使召還など)から順次発動されることになるのかもしれませんが、言ってみれば泥仕合の様相を呈してきた、としか見えないのかも。

国家間のルールに従って進める日本、進めない韓国ということで、日本国内では日本が完全に正しい、韓国には世界中からバッシングが寄せられるであろう、などのある意味勇ましい意見も見られますが、国際社会は上手にふるまったもの勝ちみたいなところもあり、所詮東アジアで未だに70年以上も前(日韓併合では100年以上も前)となる過去の問題でもめてる2国としか見られていないかもしれません。

北朝鮮や中国からの脅威にさらされている現状、ヒートアップしているのは日本と韓国だけで、西側諸国以外からは「これは良いことだ」と笑われていることも想像できそうです。

これらから考えると、今回の現金化が実際行われたとしたら対抗措置をとるとらないに注目するより、それを契機に(残念ながら)韓国は存在しないものとして、経済・安全保障を築いていく、その他の国々とどのように国際社会を生き抜いていくか協力関係を築き、成長が止まっている日本をどのように導いていくのかを今まで以上に考えていく必要がありそうです。

そうした場合、今も今後も重要になるのが諸外国との外交ですが、外交成果はすぐ数値化できるものでもなく目に見えずらいもの。

安倍元総理の国葬問題を見ても外交の重要性がほぼ語られず身近で分かりやすい宗教問題や費用に論点が行ってしまっているようですが、徴用工訴訟の現金化問題では日本の立場から見てどうなのかより国際社会から見てどうなのかという視点で冷静に今後の日本の未来を見てみる必要があるのでしょう。

東アジアの2国間の過去から引きずる問題。
世界はウクライナ問題を含めて自国内の課題解決で忙しいのにそんな問題に構っている暇はない、というところで、その正当性に関する主張に耳を傾ける時間を設けてくれるのは友好関係を築いた国々のみかもしれません。

特にG7やG20に属する、世界の中でも力を持った国々がどのように見ているかがポイントになりそうですが、耳を傾けてくれなければ「どっちもどっち」としか見られず、世界中から韓国がバッシングを受けるなどは、単に日本の立場から見ただけの願望に終わるかもしれません。

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