WHOはなぜパンデミックと言わない?宣言するしないで何が変わるのか




新型コロナウイルスによる新型肺炎の世界的な感染拡大に伴い、WHO(世界保健機構)も危険性評価を「高い」から「非常に高い」に引き上げたのだとか。

2月29日現在で、世界51カ国まで感染が広がっている状況ですが、そうした中でも「パンデミックの宣言ではない」と強調しているようです。

単純に言葉の定義からすれば、既に世界的に見ても「パンデミック」と言えると思いますが、こうした状況においてもWHOが「まだパンデミックではない」としている理由は何があるのでしょう。

WHOがパンデミックと宣言するしないで何が変わるのかも含めて調べてみました。

危険性評価とパンデミック

新型肺炎の感染拡大に伴い、今では世界中がその対策に追われているところですが、状況的には以下のようです。

世界保健機関(WHO)は28日、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の危険性評価で世界全体を「高い」から、最高の「非常に高い」に引き上げた。感染者の広がりが中国以外の世界全体に及んでいる状況を重視した。一方で、パンデミック(世界的な大流行)の宣言ではないと強調。発症した場合の重篤度の評価も変更せず、ウイルスの感染拡大を抑えることは可能だとして、各国に対策を急ぐよう求めた。

引用元:毎日新聞 2020/02/29

WHO(世界保健機構)としては、危険性評価を「高い」から最高レベルの「非常に高い」と引き上げたものの、パンデミックの宣言ではない、としているようですね。

ここに出て来る”危険性評価”とは何かを調べてみると、若干意味合いが異なるかも知れませんが、SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)では

「科学的な調査研究を通じて、ある危険物質や病原体が人体に及ぼすリスクを客観的に明らかにすること」

と定義されているようです。
SPS協定(農林水産省)はこちらを参照(PDF)

つまり今回の新型コロナウイルスでは、そのウイルスが人体に及ぼすリスクについて「高い」から最高レベルの「非常に高い」とした、ということになるでしょうか。

こうした中でもWHOは「パンデミック(世界的な大流行)の宣言ではない」と言っているようですが、つまり、「人体に対する今回のウイルスの危険性は非常に高いが、まだ世界的な大流行(パンデミック)には至っていない」ということになるでしょうか。

パンデミックな状況

「パンデミック」の言葉の定義はどうなるかを調べてみると、「WIKIのパンデミック」からは以下になるようです。

  • パンデミック(pandemic)とは、ある病気(感染症)が国中あるいは世界中で流行すること
  • ある感染症(特に伝染病)の(顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した)世界的な流行。

パンデミックとは、ある病気が、国中、もしくは、世界中での流行、を指すとのこと。ここでの「流行」が、どの程度のものを指すのか、があいまいですが、過去「パンデミック」と呼ばれた事例をいくつか見てみましょう。

  • 1)黒死病(14世紀)
    • 14世紀にヨーロッパで大流行。2500万人から3000万人もの死者をだしたといわれる(当時のヨーロッパ総人口の約3分の1)
  • 2)天然痘(16世紀)
    • アメリカ大陸で16世紀に大流行。先住民の人口が10分の1まで減少アステカ帝国やインカ帝国の滅亡の一因となったとされる。
  • 3)スペイン風邪(20世紀前半)
    • スペイン風邪が1918年から1918年にかけて世界的に大流行。死者約5000万人から1億人ともいわれる。

こうしてみると、流行、がどれほどのものかが分かりづらいですが、死者の数が半端ない、というか、数千万人というオーダーにのぼるもの、に見えます。

ちなみに、SARS(2002年11月から2003年8月)も世界各地で流行し、8,096人が感染、世界37ヶ国で774人が死亡、となりましたが、パンデミック、ではなく、その一歩手前の状態だったようです。

今回の新型コロナウイルスの場合、2月29日時点の状況としては、

WHOによると現在、中国以外で感染者が見つかったのは51カ国で4691人。全大陸に及び計67人が死亡した。

引用元:毎日新聞 2020/02/29

感染者は中国を除けば(ですが)約4700人、死亡は67人、と、確かに世界的に見れば51カ国に感染が広がってますが、過去のパンデミック事例と比べると、規模はまだ小さい、とも見えそうで、そうしたことからWHOは「パンデミックではない」としているのかも。

ただ中国を入れると、全世界で感染者は8万人、死者3000人という規模になってますが。それでも過去のパンデミックにおける死者が数千万人規模、というところから見ると、規模的にはまだパンデミックではない、ということなのかもしれません。

パンデミック宣言すると何が変わる?

強調している点が気がかり

ただ気になるのが、以下の報道部分(引用再掲)。

危険性評価で世界全体を「高い」から、最高の「非常に高い」に引き上げた。感染者の広がりが中国以外の世界全体に及んでいる状況を重視した。一方で、パンデミック(世界的な大流行)の宣言ではないと強調。発症した場合の重篤度の評価も変更せず、ウイルスの感染拡大を抑えることは可能だとして、各国に対策を急ぐよう求めた。

引用元:毎日新聞 2020/02/29

WHOは、単に「まだパンデミックとは言えない」ということではなく、「パンデミックの宣言ではないと強調している」という内容。

なぜ「パンデミックの宣言ではない」とわざわざ強調する必要があるのか、という点が少し引っ掛かります。

その後に続く内容からすれば、「ウイルスの感染拡大を抑えることは可能」であるから、

  • 拡大を押さえられないものではない、
  • 51カ国に感染が広がっているが、これ以上大きく広がることはない

ということから、危険性評価(人体に及ぼすリスク)は「非常に高い」に引き上げたが、パニックにならないように、という意味で、「パンデミックの宣言ではないと強調」している、ということになるのでしょうか。

過去の誤警告

過去WHOは「パンデミック宣言をしたが、実はパンデミックと言われるほど流行しなかった」、ということがあるようです。

2009年の新型インフルエンザ(H1N1亜型:A型インフルエンザの亜種)において、WHOは「すべての人類の脅威」としてパンデミック宣言をしたようですが、実際にはこの時のインフルエンザは他の季節性インフルエンザと大差のないレベルだったようで、空振りの宣言となったようです。

が、WHOがパンデミックを宣言するのは重大事ととらえられ、この空振りの宣言を誤警告として欧州議会がその経緯の調査に踏み出す事態に。調査の結果、この誤警告となった要因としてWHOの意思決定に製薬会社の意向が大きく影響しているとして、欧州議会はWHOの意思決定システムを問題視したようです。

WHOのパンデミック宣言

こうした過去の事例からしても、WHOもパンデミック宣言をするには、より慎重にならざるを得ない、という点があるのも想像できますし、以前の誤警告(まちがったパンデミック宣言)では欧州議会の調査の結果として製薬会社の意向が大きく影響していたとされることから、WHOのパンデミック宣言には、医療関係、製薬会社なども大きく影響を受ける、と言えそうです。

実際、WHOが誤警告としてパンデミック宣言した2009年の新型インフルエンザ(H1N1亜型)では、、欧州評議会の保健委員会長が「大企業が、ワクチンを売るためにWHOに圧力をかけた」とか(これは根拠が乏しかったようですが)、「パンデミックに関するWHOの顧問と製薬会社との間に金銭関係があるといった調査がある」などの批判がでるとか、いろいろあったようです。

WHOがパンデミック宣言をするしないには、どうしても製薬会社などの動きとも関係するため、その宣言にはそうした意味からも慎重にならざるを得ない、ということになりそうです。

懸念すべきは製薬会社などの動きではなく、パンデミックという状態になっているかどうか、という点で、それだけを純粋に判断すれば良いと思いますが(そうした判断により各国の警戒レベルも変わると思いますので)、お金も絡むとその判断も微妙にならざるを得ない、ということでしょうか。

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