自衛隊中東派遣で警察権の行使と自衛権の発動とは?護衛艦名も知りたい

緊迫する中東情勢ですが、いよいよ自衛隊中東派遣の閣議決定案が了承されたようです。実際の閣議決定は当初予定の12月23日から延期されて12月27日になるようですが、これでまず自衛隊派遣は決定とみてよいでしょう。

この自衛隊派遣では、武力攻撃の可能性も指摘されており、そうした場合「警察権の行使」(海上警備行動)と「自衛権の発動」により反撃する、ということも想定されますが、この2つの違いは何か、また派遣される護衛艦の種類や名前は何になるのか、そのあたりを見ておきましょう。

自衛隊中東派遣の状況

まず今回の自衛隊中東派遣の状況を日本経済新聞の記事からまとめてみると、

  • 派遣目的:防衛省設置法に基づく「調査・研究」
  • 活動期間:1年想定
    • 状況により延長される可能性があり、延長時には改めて閣議決定や国会での報告が義務付けられる
  • 派遣時期:来年1月下旬を目指している
    • 米国主導の有志連合「番人(センチネル)作戦」が活動を本格化する時期
  • 活動範囲:オマーン湾、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側のアデン湾の3海域の公海
  • 規模:海上自衛官を中心に270人規模
    • 護衛艦1隻、哨戒機1機
    • 護衛艦:ヘリコプターが搭載できる中規模(4千~5千トン級)のもの。約250人が乗艦、司令部要員の50人も乗せる想定
    • 哨戒機:要員としては約20人。現在ソマリア沖アデン湾の海賊対処任務にあたっている「P3C」を活用予定

今回の派遣は、あくまで調査、研究目的。だからこそ、とも言えますが、派遣されるのは護衛艦1隻と哨戒機1機だけなんですね。

この護衛艦は何か、本当に目的が果たせるのでしょうか。

護衛艦は何になる?

護衛艦については、ヘリ搭載可能な4千~5千トン級のもの、という情報。

ヘリ搭載可能な4千~5千トン級の護衛艦となると「ひゅうが」とか「いずも」みたいな2万トンクラスではなく、哨戒ヘリコプター1機を搭載できる「はつゆき型護衛艦」(4千トンクラス)か、哨戒ヘリコプター1基搭載可能(緊急時には2機可能)な「あさぎり型護衛艦」(5千トンクラス)になるでしょうか。

でも今回約250人が乗艦、となると、はつゆき型護衛艦は乗員195名 ~ 200名、あさぎり型護衛艦は220名、ということから、どちらにしてもちょっと窮屈な感じです。

活動範囲は同じ日経の記事から引用すると以下の通り。

活動範囲は薄い赤っぽい領域になりますが、実は最も重要だと思われるホルムズ海峡は除外。ただ、こうして地図で改めてみてみると、この範囲を護衛艦1隻、哨戒機1機で、というのは結構な無茶ぶりに見えますね。航行する日本関連船舶が数千に及ぶとも言われてますし。

別に戦闘のためにいくわけではない、目的が「防衛省設置法に基づく「調査・研究」」というところにあり、また密かに、米国を中心とする有志連合に参加せずイランとの関係を重視しているのだから、というところで、これで良い、ということになるのでしょう。逆に言えば、護衛艦1隻、哨戒機1機だけでは、調査、研究以外は何もできない、とも言えるところ。

警察権の行使と自衛権の発動

緊迫した中東情勢ということから、日本船舶はもちろん、自衛隊への武力攻撃が、意図したものか偶発的に起こるものかはさておき、可能性は当然考えられるでしょう。

では日本船舶や自衛隊自体への攻撃があったば場合、自衛隊はどうなるのか?

このあたりはFNN.jpプライムオンラインの記事で結構詳しく解説されてますが、それを分かりやすくまとめてみると、

  • 日本関係の船舶が危険に晒されている場合:
    • 武器を使わずに“体を張って間に割って入ること”は可能
    • ROE(部隊行動基準)に書かれる必要があるが、公には情報収集が任務なので任務外となる
  • 緊張の高まりによっては「海上警備行動」に移る可能性がある
    • 自衛隊法82条:海上での人命、財産の保護、治安維持のため、総理大臣の承認により自衛隊に必要な行動をとるよう命じることができる

海上警備行動は1999年3月に初めて発令され、日本海で北朝鮮の工作船らしい高速船の前方に127mm砲25発の威嚇射撃を行ってます。また2004年には中国原子力潜水艦が石垣島周辺海域を領海侵犯した時にも海上警備行動が発令されてますが、このときは結果として警告爆撃などは行われませんでした。

今回の自衛隊派遣では、状況により海上警備行動に移ることも考えられ、その場合には「警察権の行使」に基づく武器使用が可能。

ここでのポイントは「自衛権の発動ではなく、任務遂行上の最低限必要な武器使用である」ということ。日本関係船舶への攻撃が認められた場合、警告を行い間に割って入り、日本海での北朝鮮工作船に対するものと同じように警告射撃を行う、ということは考えらそうです。

  • 警察権
    • 相手が石を投げてきたら石しか返せないのが警察権
    • 主語は自衛官(トリガーを引いたら本人に責任が及ぶ)
  • 自衛権
    • 相手が石を投げてきたら反撃して壊滅させることができるのが自衛権
    • 主語は自衛隊の部隊(トリガーを引いても本人には責任が及ばない。部隊の命令により行動する、ということになるでしょうか)

プライムオンラインでは、上の図で説明されていたようですが、ぱっと見分かりづらいので文字にすると、

  • 調査・研究(海上警備行動が発令されてない場合)
    • 船舶の警護はできない、武器使用は正当防衛か緊急避難とされる場合
  • 海上警備行動が発令された場合
    • 日本関係船舶を警護でき、その場合には警察権の行使となる

といったことになるでしょうか。

自衛隊が明らかに攻撃された、となれば、警察権の行使どころか自衛権の発動となって、主語は自衛隊の部隊、攻撃して北側に反撃して壊滅させることができる、ということになると思いますが、その場合には有志連合に入り、共同で行動する、ということが考えられそうです。

今後どうなる

今後は自衛隊中東派遣が閣議決定され、1月に向けて派遣準備を整えて実際に派遣される、という流れ。

今回の派遣では、閣議決定案に「不測の事態が発生した場合は「海上警備行動を発令して対応する。迅速な意思決定に努める」とも明記されるようで、かなり危険な状況である、その中での自衛隊派遣、ということになるかと思います。

中東情勢が早く落ち着いてくれればよいですが、それまでにはまだまだ時間がかかりそうですね。

シェアする

フォローする