
部下の叱り方、怒り方はとても難しいものです。
怒りの炎を上げる上司、今すぐにでも逃げ出したい部下。さてあなたは人前やメールで部下を叱るタイプでしょうか。それとも別のやり方で叱るタイプでしょうか。
叱り方、怒り方もポイントを外すと逆効果で、なにも良い方向に向かわないばかりか部下からの信頼を失い恨みの念を抱かせることもあり得ます。
ここで改めて、人前やメールで怒ったり叱ったりする場合のポイントを押さえておきましょう。
部下の叱り方:人前で叱るのは逆効果?
人前で怒ったり叱るのは気持ちいい
部下が何かミスをしたとか、部下のしたことで大問題が発生した、という場合、上司としてはつい怒りも湧き上がってくるものです。
文字通り「怒りの感情」が沸き上がり、周りに人がいる中その場で部下を捕まえて「怒る」「叱る」ということはどこの会社でも良くあること。
「怒る」「叱る」タイミングは、何か問題が発生した時が一番効果があるもので、上司からすれば「部下をタイミングよく叱れるし、周りの部下にも示しがつき」、更に「沸き起こる怒りの感情の発散もできる」となれば、気持ちのいいものにもなりますね。
よしよし、タイミングよく叱れた
他の部下にもいい刺激を与えたり勉強にもなっただろう
上司としてはひとまず満足し怒りの感情も一旦流れ、あとは問題の処理をしなくては...と忙しい毎日を送っているかもしれませんが、そこには大きな問題が潜んでます。
部下の中でうずまく感情
では人前で怒られたり叱られた部下はどう思うでしょうか。
- やっぱり怒鳴られた。
- しまった。あれはまずかった。
- 叱られたのは自分に問題があるからだ。
- 今後はしっかり注意して、仕事がんばるぞ。
部下がこう捉えてくれることを期待して怒ったり叱ったりするわけですが、あなたが仮に人前で誰かに怒られる、叱られる、というとことを想像してみてましょう。
仕事上でなくても、過去には子供の頃の家庭内、小学校や中学、高校といった学生時代に、1度や2度は他の人がいる中で、怒られた、叱られた、という経験があると思います。
その時にどう思ったのか。
確かに何か悪いことをしてしまった。
でも「人前」で怒られたり叱られたりすると「悪いことをしてしまった」という反省以前に、
みんなの前で「ばつが悪い」「恥ずかしい」という感情がまず生まれると思います。
周りの人の中に、密かに思いを寄せる同僚や後輩がいたとしたら自体は更に悪くなり、単にばつが悪いという想い以上に「恥をかかせやがって...」という恨みの感情をも生み出します。
人前で怒られたり叱られると、たとえ正しい理由からであっても、プライドが傷つけられ、そのことを反省するのはどこかに飛んでしまい、怒りや恨みの感情を育てているだけ、にもつながってしまうんですね。
知らないのは上司だけ
叱っている上司本人には、全く知るよしのない部下の恨みや怒りの感情。
こうなると、いくら叱ったとしても効果は全くないどころか、その部下は一生あなたを恨み、信頼もしてくれない、ということにもなりますね。
部下との信頼関係が崩れてしまえば、
- あなたの業務上の命令も真剣には聞けず、
- 注意しても信頼関係がないことから何かあっても聞く耳持たず
- 上司として部下をコントロールできなくなる
こうした事態にも発展しかねない、非常に悪い状況へとつながります。
チームや部署の生産性は落ちて行くことにもなり、部下たちの間にも歪ができ、結果として大きな損失を招くことにもなり得ます。
人前で部下一人を叱るとこうなるのか...
では、部下一人じゃなく全員をまとめて叱ればよい、みたいに考えても、これはほぼ意味がありません。
叱る場合、その個人に向けたものでないと、「私の事じゃない、他の誰かの事なんだ」、として受けとめられる可能性が非常に高く、全体周知したからよいだろう、という叱る人の自己満足だけで終わります。(赤信号、みんなで渡れば怖くない適な心理です)
これでは部下の信頼も得られない、誰も得しない結果だけが残るというものです。
なぜ人前で叱るのか
部下を人前で怒ったり叱ったりすることは、状況をわきまえてない、とも言えます。というのも、部下もプライドのある一人の人間。そ子を意識せず、
- 部下を単なる所有物のように見ている
- だから相手の立場(部下の立場)を考えず、怒りたい時に怒る、叱りたい時に叱る
一言で言えば、単に怒りの感情に流されているだけのようにもなり、部下もその周りの人も、上司のお叱りの言葉を以下のように受け取っているかもしれません。
この野郎、何してくれるんだ。俺が怒られるじゃないか
叱るというのは、ミスをした部下が「同じ過ちを起こさず、正しい道へ導くため」に行うもの。
単に怒りをぶつけただけでは反発心を育て信頼感を失うだけで、「怒る」「叱る」の本来の目的である「同じ過ちを起こさせない」「正しい道へ導く」は全く達成できません。
人前で叱る人の特徴
ここで人前で叱る人の特徴を少々見ておきましょう。
- 1)時と場所はあまり意識していない
(だから人前でも平気で叱ったり怒ったりできる) - 2)相手の立場を考えない
(相手の気持ちを考えないから人前で怒っても気にしない) - 3)自分を上に見せたいと思う気持ちがある
(そんなつもりはないけど、人前で怒る自分カッコイイ、注目されている、という意識が働くことに) - 4)相手を力でコントロールする傾向にある
(言葉で諭すというより、言葉の圧力で従わせようとしてしまう)
これらの中で、自分にもそうした点があるかも、と思ったら、ここで少し冷静に自分の怒り方、しかり方を見直しても良いかもしれません。
上司が「怒る」「叱る」のは、上司自身のストレス発散でもなければ、力による支配でもありません。部下の成長を促し、仕事をより楽しくし、結果として部署全体の生産性をあげるためであり、そのための冷静なコントロールである点を押さえておく必要がありますね。
次回叱る場面が出てきたら、こうした点を意識して頭はクールに叱りましょう。
自分のためか相手のためか
ここまでに「怒る」「叱る」と2つの言葉が出てきてますが、ここで「叱ること」と「怒り」の違いを少し詳しく把握しておきましょう。
- 怒りとは、単に自分の感情を誰かに向けて放つこと
- 目的は、感情の解放です。
単に怒るのは、怒ること自体が目的で、自己満足だけ(自分本位)ということになりますね。
これでは部下にとって何も役立たないどころか、反感を買い反発心を育てるだけ。周りの人からも不快感しか得られない結果にもなり得ます。
では叱るとはどういう言うことかと言えば、
- 叱るとは、相手にこうなってほしい、2度とこういったことはしないでほしい、と相手のためを思って、強く指導すること
- 目的は、部下に納得してもらい、2度と同じことを繰り返さないようにすること
相手のためを思って行うのが「叱る」(相手本位)ということになりますね。
怒りが自分本位であることに対して、叱ることは相手本位。
ここが一番の違いです。
何かミスをした部下に理解し納得してもらうのがポイントで、力任せに説き伏せる、というのとは全く異なります。
部下が何か大きなミスをすれば、上司としては当然冷静でいられなくなるし、二度と部下にそれをしてほしくない、改善してほしい、と思うのは上司としては当然のこと。
でもそこで怒りだけを出すのであれば、それは上司の自己満足だけに終わります。
「相手のためを思って指導する」ということがなければ、本当の「叱る」というものにはならないということですね。
1対1で話せる環境をつくる
叱る場合も時と場所を考えることが非常に重要。
人前で怒ったり叱ったりすることは、その意図が伝わるどころか、部下のプライドを傷付け、深い深い恨みまでも生んでしまうことにもなり得ます。
- 叱る時には人前は避け、まず1対1で話せる環境をつくること
1対1なら、皆の前で恥をかかされるということもなく、まず上司の言うことに対しても向き合える。(周りに他の人いませんから)
そうした中で、上司の怒り、お叱りがもっともだと思えば部下も納得し、これが反省へとつながり、最終的にはその部下の成長につながります。
1対1だとしても、以下のようなことをすると結局反感を買い、恨みを持たれるだけの結果になるので要注意。
- 批判する/指摘しただけで終わり
- 単に間違いを指摘して、文句ばかり言う
(間違いは部下も分かっていて反省もします。でも分かっていることを何度を何度も言われれば、折角の反省はどこかに飛んでしまい頭に来るだけにもなりますね)
- 単に間違いを指摘して、文句ばかり言う
- 人格否定する
- だからお前はダメなんだ、どういう育ち方してきたんだ、だから今の若い奴にはまかせられない、など、問題点とは異なる人格に話を及ばせる。
(問題解決には全くならず、これは単に誹謗中傷しているだけにもなり、反抗心や敵対心を育てるだけ)
- だからお前はダメなんだ、どういう育ち方してきたんだ、だから今の若い奴にはまかせられない、など、問題点とは異なる人格に話を及ばせる。
- 過去の余計なことを持ち出す
- こんなこともしたよな、あんなことをあったよな、と過去のことまで持ち出す
(今の問題が重要なのであり、過去の話まで混ぜると本質部分がどこかに行ってしまう。お互い気分が悪くなるだけで、信頼関係も崩れ、不信感、敵対心を育てるだけ)
- こんなこともしたよな、あんなことをあったよな、と過去のことまで持ち出す
- 追求しすぎる
- なんでだ、どうしてだ、なぜだ、と追及するのは責めているだけ。
(部下にしてみれば精神的に上司に追い込まれているだけになり、問題解決や教え導くことにはつながりずらい。部下をつぶす、壊すことになるだけ)
- なんでだ、どうしてだ、なぜだ、と追及するのは責めているだけ。
- 他の誰かと比べる
- 誰々ならうまくできる、どうして誰々みたいにできないんだ、と他の社員を引き合いに出す
(他の誰かと比べられると、言われる方は人格否定された気分になる。家庭で言えば兄弟間でありがちなことにもなりますが、これでは話を素直に聞けないどころか、反抗心を育てる結果になるだけ)
- 誰々ならうまくできる、どうして誰々みたいにできないんだ、と他の社員を引き合いに出す
興奮して気が付かないうちにヒートアップしてしまい、あれやこれや余計な話まで持ち出す人もいたりしますが(まるで子供の喧嘩だったり夫婦喧嘩みたいな感じ)、こうなると何のために怒ったり叱ったりしているか上司も部下も分からなくなり、不毛な結果にしか到達できません。
部下が委縮して仕事をしなくなるか、上司への不信感、恨みの感情を育てるだけの結果ともなり、百害あって一利なしです。
上手な怒り方、叱り方のポイント
ではどのようにすれば、部下のためのになる怒り方、叱り方になるのでしょう?
ポイントは「メッセージとして伝える」「考えてもらう」という2点にありそうです。
1)個別に話す
1対1で話せる環境(他の人に会話を聞かれない環境)を作るのが第一歩。
人前ではない、つまり、他の人に聞かれない環境で話す。
大きな会社では会議室のどこかが空いていればそこを使う。そうした場所が無ければ、周りの人から離れたミーティングテーブルや、周りのに人がいないタイミングで自分のデスクに呼んで他の人に聞かれないように話をする。
「ちょっとあの件でいいかな?」などと声をかけて呼べば、あ、来たか、あの話だな、と部下の方も心の準備ができるし、上司が気を使ってくれている、というのも伝わります。部下が話を聞いてくれやすくなる環境づくりができますね。
ポイントとしては、どこか個別の部屋に呼び出す場合、毎回同じ場所は使わない事。同じ場所を使っていると、あいつ、叱られるぜ、と、折角1対1の場を作っても、これでは周囲に丸わかりになりますので。
2)理由を明確にする
なぜ上司が起こっているのか、なぜ自分が叱られるのか、その理由を明確にするのは、部下が納得する上で非常に重要なポイントです。
理由の明確化と勘違いして、単に批判や指摘、追求だけに終始すれば、仮に部下が納得した顔を見せたとしても、全く真意は伝わりません。それどころか、なんだよ、全く...と上司への信頼もなくなります。
「これをすると結果としてこういう事態を招くんだ。そうなるとxxxx、だからこういうことをしないようにしないとな」など、理由が明確になってこそ納得し、今後の改善に向けても取り組めます。
3)根底にある感情を伝える
問題の指摘は実は表面上だけだったりします。
簡単な例として、遅刻を頻繁にする部下を叱るケースを考えてみてください。
なんで遅刻ばかりするんだ、だめだろ、そんなことじゃ、というだけでは、はい、すみません、で以上終わり。その後の改善は見込めず、また同じことの繰り返し。
この場合には、たとえば「遅刻すると何かあったのではと不安になる、心配するもんだぞ」など、その根底にある感情の部分を伝えること。
これにより部下は、心配かけるんだ、確かに。上司には責任があるしな。じゃぁ迷惑かからないように遅刻しないようにしないと...と考えるようになるんですね。
表面上ではなく、根底にある感情の部分を伝えることで部下の意識と行動を変えていく。ここに注目していきましょう。
4)メッセージとして伝える
メッセージとして伝えるとは、
単にこれはダメ、あれはこうしろ、と命令するのとは違い「私はこう思う」という形で伝えるもの。
遅刻の例に戻れば、遅刻はダメ、というだけでは相手の悪い点を指摘しているだけですが、ここで「私は心配なんだ」という「私」を主語にて相手にその思いを伝える。
- 「お前のこうした点がだめだ」と「相手のことだけ」を話すのは「ユー(You)・メッセージ」
- 「私はこう思うんだ」と自分の想いを伝えるのは「アイ(I)・メッセージ」
この自分を主語にした「アイ・メッセージ」が相手に思いが届くメッセージになります。
何か部下が失敗した時「何やってんだ」と、部下のことだけを言うのは「ユーメッセージ」ですが、これを「俺はお前に凄く期待しているんだ。だから俺はこの仕事も任せたし...」というように上司である自分の想いを含めた伝え方にすると「アイメッセージ」に変わります。
自分の想いを伝えるアイメッセージで話せば、
「そうだったのか。上司の真意はそこにあったのか。上司をがっかりさせてしまった。これからは今まで以上にしっかりしていかないと...」
と、部下にも言葉が届き、意識や行動を変えていくことにつながります。
5)考えてもらうこと
単に部下を頭ごなしに怒ったり叱ったりするのは、部下から見れば「その場を早く切り抜けたい」、「早く終わらせたい」と、逃げることばかり考えさせる結果にもなります。
怒ったり叱るのは、部下に同じミスを繰り返さないようにするため。
部下には「叱られる」「早く終わってほしい」という思いを起こさせるのではなく、「自らの問題点をとらえてもらう」ことが何より重要で、そのためには、部下自身に考えてもらうよう促すことが非常に大きなポイントになります。
- ~となったのはなぜだと思う?
- どうしたら良かったんだろう
- 同じことをしないようにするには何が考えられるだろうか
- そのために今できることはなんだろう
- 今後に向けてどうすれば良いと思う?
こうした問いかけをによって自分自身で問題を見つめ直してもらい、更に部下自らその答えを言葉でもらう。
部下から発せられる言葉は部下自身の記憶に強く残り、自分で行ったその言葉にも責任を持つようになるものです。
これは「コーチング」と呼ばれるものになりますね。
6)期待を添える
悪い点だけでなく「良い点もしっかり見ているよ」というメッセージを伝えることも、部下が失敗を受け止めるのにはとても重要なポイント。
怒る時、叱る時でも「xxxにはいつも助かっている」など「ねぎらいの言葉」を最後に入れる。
部下からしてみれば、
「今回は失敗して叱られているが、良い点もしっかり見てくれているんだ」
ということが伝わり、それが
「これからは二度と同じ失敗しないように頑張らなくては。」
という失敗を繰り返すことなく前に進む気持ちにつながる、というものです。
他にも、部下のタイプによって叱り方を工夫する、というのもありますが、ここまで見た6点をまず押さえ、部下に愛情をもって怒る時には怒る、叱るる時には叱る、を実践していきましょう。
部下の叱り方:メールのメリットとデメリット
上司の中には口頭ではなく「メールで怒る」「メールで叱る」という場合もありますが、メールの場合では何に気を付けないといけないか、最後に見ておきましょう。
まずはメールで叱る「メリット」と「デメリット」から。
メールで叱るメリット
メールは時間に拘束されずに自由に書けるもの。また相手が目の前にいないことから上司である自分もゆっくり考えることができる、というのが最大のメリットになりますね。
- 自分もゆっくり考えられる
- 時間があるので、上司自身も改めて考えを整理/まとめることができる
- 何度も読み返せる
- 文字なので、上司自身も部下も何度も読み返すことができる
- 文字として残せる
- 文字として残るので、何かの時に改めて読み返すことができる
- 声、表情が含まれないので、淡々とメッセージが伝えられる
- 純粋にメッセージとして送ることができる
こうした理由からメールで怒ったり叱る上司もいますが、実際にはデメリットも大きい、というところは押さえておきたいポイント。
メールで叱るデメリット
メールを書く主体は上司自身。
その分、自分の思い中心になってしまい、叱られる相手(部下)は一方的に読まされるだけにもなり、更に文字であることが最大のデメリットにもなります。
- 誤解の元
- 文字表現に対して複数の受け取り方ができ、誤解される場合がある
(真意が伝わらず変に受け取られる場合がある。これは文字情報の限界)
- 文字表現に対して複数の受け取り方ができ、誤解される場合がある
- 一方的になりがち
- 怒りの気持ちが優先してしまうと一方的になりがち
(部下からしてみれば、言われっぱなし状態)
- 怒りの気持ちが優先してしまうと一方的になりがち
- 弁明の機会を与えない
- 部下に読ませるだけで、弁明の機会を与えないことになりがち。
(これも部下からしてみれば、言いたいことも言えず言われっぱなし状態)
- 部下に読ませるだけで、弁明の機会を与えないことになりがち。
- やり取りが始まると大変
- 仮に部下からの返信で「それは違う」などやり取りが始まれば、その1件を落ち着けるのに非常に時間がかかる。(場合によっては何日もかかる)
- 本題から外れ収拾がつかなくなることも
- やり取りが長引けば、話が本題から外れ色々波及し、収拾がつかなくなる
メールでもLINEでも同じですが、文字にして怒ったり叱ったりする場合、本来の目的である「部下に問題点を認識してもらい、より良い方向に進んでもらう」から外れ、逆に部下のモチベーションを下げ、お互いの信頼関係の破綻にもつながります。
文字でメッセージを送る場合には、こうした大きなデメリットがそこには存在していることを十分意識しておきましょう。
後で口頭で対話する必要性
文字情報は、書き手が意図する通りに読み手が受け取り理解するとは限りません。だからメールやLINEでの連絡では、誤解があってはいけないところは改めて口頭で説明をするのが良いですね。
こうした点から見れば、メールで叱るのは極力避けた方が賢明で、仮にメールで叱る場合があったとしても「あの件についてちょっといいか?」と声をかけ、改めて話をするのが双方にとって良い結果をもたらすことになると思います。
ちなみに文字情報に関連して情報の伝達では「メラビアンの法則」というものがあります。
「3Vの法則」や「7・38・55ルール」などと呼ばれるものですが、人が受け取る情報は「言語7%、聴覚38%、視覚55%」というもので、これに基づいて言語情報(この場合ではメール)だけでは7%しか伝わらない、とも言われます。
実際には、これは正しくない、とする説もあるようですが、この「メラビアンの法則」の意図しているのは、「どちらとも受け取れる内容」では「言語情報ではなく視覚情報、聴覚情報を重視する」というところ。
言語はどちらとも受け取れたり、読む人によって理解の仕方も様々なケースも出てきます。メールの文章も同様で、そうなると、聴覚、視覚情報を付けた上で(実際に面と向き合い、顔の表情や声の大きさ、声のトーンが伝わる状態で)伝える、ということが必要になりますね。
文字を使って部下を叱る場合は、メールを出した後、改めてその内容について1対1の口頭で話し合いの場を設ける。これが叱る内容をしっかり伝えること、またその後の人間関係においても非常に重要、ということになります。
メールでの叱り方
メールで叱る場合のポイントは、口頭で叱る場合に同じです。
- 1)理由を明確にする
- 2)根底にある感情を伝える
- 3)メッセージとして伝える
- 4)考えてもらうこと
- 5)期待を添える
口頭で叱る場合では、この5点に加えて「個別に話す」のトータル6つのポイントがありますが、メールはそもそも個別なので、この5つをポイントを押さえて行きましょう。
メールならではの叱り方
口頭とメールの違いをもう1つ。
1対1で向き合って話せば、声の大きさ、声の調子、顔の表情などから、言葉のニュアンスも正しく伝わります。
メールの場合、声や顔の表情がないだけに、ちょっとした言い回しが意図せず命令口調に見えたりする場合もあり、文字ではこうしたことが起きやすい、という点には要注意。
たとえば、丁寧に話しているつもりの「~してください」という表現。
前後関係もありますが、失敗して意気消沈している部下かかからしてみれば、「~しろ」と言わんばかりの命令の言葉としてとらえられてしまう場合もあります。
こういった時は、~するようにしましょう、など置き換えれば良いですが、誤解のない表現、相手を追い込むような表現、一方的に受け取られる表現とならないよう、メールの場合(文字情報の場合)には細心の注意が必要です。
ポイントまとめ
- 部下を叱る場合には、人前は避ける
- 怒ると叱るを理解する
- 怒りとは、単に自分の感情を開放するもの(自分本位)
- 叱るとは、相手のためを思って行うもの(相手本位)
- 叱り方のNG集
- 批判や人格否定、過去の話はしない
- 他の人を引き合いに出さない
- 追求しすぎない
- 上手な叱り方
- 1)個別に話す
- 2)理由を明確にする
- 3)根底にある感情を伝える
- 4)メッセージとして伝える
- 5)考えてもらう(自分の事としてとらえてもらう)
- 6)期待を添える
- メールで(文字を使って)叱るデメリット
- 文字情報は正確に伝わりづらい、文字情報は誤解を生むことも多くある、
- 一方的になったり、弁明の機会を与えない
- やり取りが始まると時間もかかり、本筋から外れて収拾がつかなくなることもある
- メールを使っても、後で必ず口頭で対話することが重要
- メールでの叱り方は、口頭での叱り方とポイントは同じ
上司が部下を叱るのは、部下のためを思ってこそのもの。決して上司の自己満足であったりストレス発散のためではありません。
口頭で叱る、状況的に難しければメールで叱る。
部下の立場も考えて、周囲に人がいないところで1対1で会話する。
部下の事を思い本気で叱れば、その言葉は必ず伝わり、部下の意識と行動を変えていくでしょう。
部下を叱る、というのは上司の1つの重要なスキル、と見ることができますね。
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